11月23日(大阪)と25日(東京)、岡井健D.C.の『マイ・プラクティス カイロプラクティック 基本テクニック論』出版記念セミナー”岡井健D.C.のマイ・プラクティス 番外編”(大阪・東京)が開催されました。
これに先立ち、岡井先生に本を込めた思い、そしてカイロプラクティックに対する情熱などをお聞きしました!(インタビュアー:セラピーウェイ代表 櫻井 京)
●カイロプラクティック、アジャストメント、サブラクセーションの定義
●カイロプラクティックとの出会い。
▶︎どんどんのめりこんで、仕事を超えたものになっていった
●岡井健D.C.の臨床スタイル
▶︎患者さんの要望に応え、カイロプラクターの特色を生かしていく
▶︎エネルギー療法のとらえ方。エネルギーは誰もが持っているもの
以下 敬称略
『マイ・プラクティス カイロプラクティック 基本テクニック論』内容編
櫻井:
『マイ・プラクティス カイロプラクティック 基本テクニック論』を一番届けたい読者はどういう方々なのか、先生の口からお話いただけますか。
岡井:
まあ、生意気かもしれませんが、あえて遠慮せず言えば、大きく3つぐらいのカテゴリーに分かれます。
まずは、カイロプラクティックを勉強中の方、これから学ぼうとしている方ですね。
あまりよいテクニックの教科書がない現在、これから学んで行こうという方々にとっては幅広い選択肢かできると思うんですね。
次に、既にアジャストを使って臨床をしている方。「もう俺はこれでいい。」と思っている人もいるかもしれないけど、やっぱりそこはもったいない。
テクニックを学ぶことに終わりはないので、これからもっとよいアジャストをしていくヒントになればいいかなと。
最後に、アジャストをあきらめている方です。そうい方は非常に多い。
いくつか理由があって、一つはよい先生に学ぶ機会がないということですね。
それと、どうやって練習したらいいかわからない。
モデルとなる、ゴールとなる先生がいなくて、モチベーションが足りないというのもあると思います。
今、アジャストメントをあきらめて離れてしまっている方に、もう1回アジャストメントの魅力を再発見してもらえたらなと思いますね。
大きく分けてこの3つのタイプの人たちに、この本を活用していただければいいなと思いますね。
櫻井:
ちょっとびっくりするぐらいたくさん練習方法が出ていますね。
岡井:
えー、これはまだ一部なんですよ。これが全てではない。
それに練習方法は自分で考えればいいんですよ。
ここに載せたのは、学生の指導とかする中で、みんなが動きのヒントや感覚をつかみやすかったものをもとに選んでいます。
学生時代に習った方法も入っていますが、私が実際の練習で使わなかったものもたくさん入っています。
自分には必要なかった練習法もいっぱい入っています。
しかし、学生たちがどうしたら身体の動きの感覚をつかめるかなと考えて、模索して取り入れてきた練習方法です。
櫻井:
テクニック習得のため、根気よく練習を続けるアドバイスをお願いいたします。
岡井:
一人でコツコツやるのは、やっぱり必要ですが、ときには仲間と一緒に練習するっていうのがいいと思います。
それから、やる気にムラがありますよね。
人間そんなものなので、やる気があるときに、とことん練習してほしいなと思います。
櫻井:
イメージ化は大事ですかね。
岡井:
何にしてもそうなんですが、練習するときも、実際の患者さんに対する動きをイメージしながらやることで効果は上がると思いますね。
生身の人間を扱うのがゴールなんですから、それをどれだけイメージするかが重要で、そうしないとただの体操になってしまう。
ダミーとしてクッションやボールを使いますが、それがダミーで終わっちゃう人もいれば、それが自分のイメージの中では実際の患者さんに変わっている人もいるということですね。
これが結構大きな違いになってくるかもしれないです。
逆に患者さんをアジャストするときは、ボールのイメージが逆に入ってきたりとかもあるわけです。
実際に人をアジャストするとき、パニックになって焦って感覚がわからなくなってしまう。
そういうときに、落ち着いてちゃんと正しい身体の使い方が蘇ってくるように、ボールのイメージを使ってほしい。
櫻井:
イメージと実際をそこまで行き来できるぐらいまで練習すればいいんですね。
岡井:
そういうのは簡単ですが、それほど簡単だったら誰も苦労はしないですよね!
櫻井:
技術を習得する場合、モチベーションを保つところで早々につまずいてしまうこともありますけど、
先生を見ておりますと、いつもモチベーションが高いです!
何かモチベーションを保つ秘訣があるのだったら、教えてもらえますでしょうか?
岡井:
私が常にモチベーションが高いとは思えないですけどね、はい。
だらけているときも多いし、本当に普通の人だと思います。
ただ、アンテナを伸ばすのは得意かもしれません。
例えば、プロフェッショナル(NHK)とか、ああいうテレビ番組を見て一流の方の話を聞いたときに、それを自分と結びつけて「自分はこの人の生き方から学んでそれをカイロプラクティックに実際に生かしていくことができるか」というようなことはすぐに考えますね。
そんな考え方の習慣が役に立っているかもしれません。
それから、実はモチベーションっていうのは賞味期限があるんですよ。
例えば、一番よくないのは、セミナーに行ってやる気が出ると「よしがんばろう」と思うんだけど、家に帰って何もしないとそのモチベーションがだんだん下がってしまう。
またセミナーに行くんだけれど、またその場限りでモチベーションがだんだん消えていく…ということですね。
賞味期限は、もうどんなに頑張ってもあるわけなんですが、賞味期限をなるべく長引かせるっていうのはやっぱり行動ですね。
行動を起こすことによって情熱がまた蘇ってくるということですよね。
「鉄は熱いうちに打て」。気持ちが強いうちに行動に起こすことで、モチベーションの賞味期限が延びます。
それでも、やがてやっぱりモチベーションというのは下がってきます。
だから、いろんな人に会ったり、セミナーに行ったり、本を読んだりとか、いろんな刺激を脳に与えていかないとモチベーションをキープするのは無理です。
だからそういうふうに刺激を与えつつ、熱い気持ちができたときに行動を起こすこと、これは非常に重要だと思いますね。
櫻井:
ありがとうございます。「刺激→熱い気持ち→行動」なんですね。
今回の出版記念セミナーも、その絶好の機会ととらえていただけたらいいですね。
岡井:
やっぱり本っていうのは、ある種退屈なところがあるわけですよね。
だから本を何回読んでも、常に感動して発見があるかというと、やっぱりそこは弱くなっていく。
実際に練習をしてみて、「ここに岡井先生が書いてあることの意味は、自分が思っているのと同じだろうか?」という迷いや、いろいろな悩み、試行錯誤が練習をしていれば、あるはずです。
私が本に懇切丁寧に書いているつもりでも、理解力、それを実際に行うテクニカルな能力っていうのは個人によって違いがあります。
だから言われた通りに進むわけではないのも当然で、疑問が出てくるのは当たり前ですね。
そういうところで苦しんで、それから私に会いに来てほしいんです。
何も練習もせずに、ただ本だけ読んで疑問を感じて出てくる質問でも、もちろん得るところはあると思います。
でも、やっぱり本に書いてあることを実際にやってみて、いろいろ悩んで苦しんだ人の方がより大きな成長があるかなとは思いますね。
櫻井:
ありがとうございます。
本を購入したら即練習してみて、その後岡井先生のセミナーに参加するのが上達への道ですね!
櫻井:
本をまだ読んでない方のために申しますと、岡井先生は本の中で、カイロプラクティック、アジャストメント、サブラクセーションについてご自分の定義を披露しています。
そして誰もが自分の言葉で定義してみることを勧めていて、こういったところに、現実と言葉をすり合わせることを常に念頭に置いてらっしゃる先生のスタンスを感じます。
本に書かれている定義は、今の自分の暫定的なものということでしょうか?
岡井:
常にそれが頭にあるわけじゃないんですよ。
経験を積むと、いろんな患者さんでいろんな結果が出てくるわけじゃないですか。
カイロプラクティックができることとできないこともわかってきて、その経験をもとに自分なりに定義について考えるのは非常に面白いことです。
ポジティブ、ネガティブな経験から、なんだかんだと学んだ個人の結論というものはあるわけで。
それを無理に既存の定義に合わせていくというよりも、自分なりの定義を持つというのは悪いことではないし、自分のやっていることに責任を持つことにもなると思うんですね。
既存の定義やオリジナルの定義は否定する必要もないし、尊重するというのは前提ですが自分の定義を考えるのは、まず何よりも面白いですよね。
櫻井:
患者さんにはそういった定義の話はされますか?
岡井:
そんなうざったいことはしないですよ。
少しでもカイロプラクティックの話ができればいいかなとは思いますが、やっぱり患者さんの興味がそこになければ、いくら話をしてもそれは入っていきませんので。
だから患者さんがそういう質問をしたときには、ググッといく、という感じですかね。
櫻井:
学生の方は結構こういう話が好きで、ディスカッションしたがる人もいるんじゃないですか?
岡井:
そうですね。そこが学生のいいところじゃないですか。頭でっかちで理想が高い。これはもう若者とか学生の特権ですよね。
私もその1人だったので、振り返ると恥ずかしくなりますけどね。
櫻井:
じゃあ学生がそういう話をしてきたら、先生もいっしょに語ったり?
岡井:
ニヤニヤして聞いてますよね。自分のその頃を思い出したりしながら。
ちょっとガイドすることはあるかもしれませんが、あんまり頭ごなしに指摘したりもせずにね。
違うと思うことでも、その人には私に見えてない素晴らしいものが見えているのかもしれないですしね。
そういう熱い気持ちがある人は嫌いじゃないんです。
まあ限度がありまして、ちょっと付き合いきれないなってときもあるけど、基本的に嫌いじゃないかな。
櫻井:
今サブラクセーションに対して、疑問って言うか、もう実は定義しきれないんじゃないかっていうような気持ちってありますか?
岡井:
たまにね、自分でも何もわかってないんじゃないかなと思っちゃうこともありますよね。
やっぱり結果が出ないときなんかは非常にあやふやに感じるもので、自分が行っていることが自分が思っている神経生理学的反応で効果を発揮しているのかと。
違うメカニズムで身体に影響しているのかもしれないなっていうことはよく考えますよね。
自分はこういうメカニズムで身体に影響を与えて、こういう効果を産んでいると思っているのに、実際は違うメカニズムなのかもしれないってことは常に考えなくてはいけないと思います。
というのは我々は目に見えないことをやっているので、実際に身体の中で何が起こって、身体がそれにどう反応してるのかっていうのは厳密なところはわからないっていうことですね。
かなりしっかりした仮説、事実に近い仮説というようなイメージですよね。
だから、いろんなものを吸収するアンテナを伸ばしたいし、もしかしたらこうじゃないかなって考えられるようにしていたいです。
今の自分の考え以外は違うと否定するならそれ以上の発展ないと思うので、フレキシブルでいたいと思いますね。
櫻井:
質の高いアジャストメントとして、本の中でオープンパックのアジャストメントが奨励されています。
そのオープンパック・ポジションの大切さっていうところを説明していただけますか?
岡井:
そうですね。物を動かすというとき、摩擦抵抗が少なければ、より少ない力で効率よく動かすことが物理的に可能になりますよね。
摩擦抵抗が大きいと、そこに余計な負荷が生まれ、患者さんへのダメージとか痛みが増えることになります。
関節を動かすときには、椎間板、関節包、筋肉、靭帯など関節の周りの組織に炎症を起こしていれば、アジャストメントでかかる力で痛みが生じる可能性はあるということですね。
そこでそういう不快感をどれだけ最小限にして、効果を最大限にさせるか。
オープンパック・ポジションで骨が動きやすくなり、負荷が減るのですから、できる限りそういう状況をつくり出してソラストすることによって、より効率的な効果のあるアジャストができるということです。
櫻井:
エンドレンジという言葉がありますが、オープンパックは、エンドレンジの中の一つのポジションですか?
岡井:
エンドレンジは限界ポイントなんで、そっちに行くとまずいですよね。
オープンパックは、なるべくニュートラルに近い。ただニュートラルではアジャストに必要な十分なテンションを見出すことができないので、必要なテンションを発生させるポジションが必要になります。
そこでテンションをつくりスラストするわけなんですが、それはニュートラルに近ければ近いほどいいのです。
ただしニュートラルに近いと、その分スピードがいるわけです。
あまりにも速いスピードを要求すると、逆にそのスピード自体が負荷となるので、ニュートラルにこだわってあまりにも速くて強いスラストをしてしまえば、結果として負担が大きくなる。
ニュートラルに近い状態は負荷を減らすためだから、それが逆に負荷を増やしてしまっては意味がないので、必要な側屈、回旋はして、ある程度関節にテンションをかけた状態で、なおかつ、1ミリでも0.5ミリでもいいからスペースを空けることによってオープンな状態にするということです。
関節がキュッと閉まった状態では骨は動かないので、なるべく空けておくということですね。
櫻井:
詳しい説明をありがとうございます! オープンパックの概念がよくわかりました。
岡井:
アジャストには、いろんなバランスがあると思います。
私も患者さんを治療するときになるべくニュートラルに近いところでスラストしたいけど、これじゃ上手くいかないなと。
わずかに多めに側屈、回旋を取り直してアジャストすることもあります。
そういう勘は必ず当たるわけでもありません。患者さんの癖もあるので、何回もアジャストしている患者さんは大体わかってきます。
だから、オープンパックは、アジャストができるかどうかのレベルの段階の先生には、上手くいかないかもしれません。
しかし、効果のあるアジャストのためには必要なものかな。この辺がアジャストの難しさの一つかなと思います。
でもね、今までオープンパックなんてことは全く頭になくてやっていて、これを意識して初めてアジャストが上手くいくようになる人も出てくると思いますよ。
櫻井:
そうかもしれませんよね。
英語で検索してもオープンパックということを、このようにクリアに説明している先生はなかなか見つかりません。
そんなことを考えると『マイ・プラクティス カイロプラクティック 基本テクニック論』は英語で出しても需要があるんじゃないかと思うんですが、先生もそう思われますか?
岡井:
いろんな素晴らしいアジャストのコツというかね、今まで上手くいってなかった人が、上手くいくようになるポイントは、他にもたくさん載せたつもりなんですよ。
だから英語圏でも需要は絶対ありますね!
私のクリニックにアメリカのカイロ大学の学生がアジャスト受けに来るんですが、これを見て「英語にはならないのか」と言われました。
カイロの大学のブックストアにあったらいいですよね、本当に。
セラピーウェイでやる気があるんだったら頑張っていただきたい。
櫻井:
そうですね、本当に夢は大きく、そういうことも視野に入れていきたいと思います。
今回はよい本を書いていただき、出版だけで終わってしまうのではなく、これを末永く大切に広めて行きたいと思っております。
岡井先生のパワーに圧倒されてばかりではなく、よいパワーをいただき、こちらからもパワーを補充できることを目指してがんばりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 
 
岡井先生ご紹介編
どんどんのめりこんで、仕事を超えたものになっていった
櫻井:
先生は人一倍熱意を持ってカイロプラクティックに取り組んでいらっしゃるなーと、いつも感じるのですが、最初にカイロプラクターになりたいと思った動機はどういうところにあるのですか?
岡井:
自慢げに話すほど立派なストーリーはなくてね、ボストンの4年制大学在学中に将来の仕事を模索していて、たまたま知り合いがカイロプラクティックの治療に通っていたので、そこからカイロについて調べ始めたというところですね。
もともとスポーツも好きだし身体に興味があって、それでカイロと聞いたときにも非常に興味を持ったということですね。
それで友人が通っていたボストンのユダヤ人の先生のところに話を聞きに行くと、その先生が非常に丁寧に説明してくださいました。
その時に、他にこれをしようというのもなかったので、ちょっとこの道の可能性を調べてみようかなという感じで、カイロプラクティックの学校に行くことを決心したということですかね。
櫻井:
なんとなく始めたわけですね…。しかしカイロプラクティックに対する情熱は、勉強したり練習したりすればするほど高まっていったのでは?
岡井:
その通りですね。入学したときは非常に興味はあったけれども、仕事の一つと考えていました。
将来の仕事として選びましたけど、勉強していくうちにどんどんのめりこんで、仕事を超えたものになっていったというか。
自分が一生をかけてやっていきたいもので、ただの仕事とは思わなくなった感じはしますね。
櫻井:
大学の在学中も相当な情熱を込めて練習されていたみたいですね。
岡井:
そうですね、どんどん面白くなってきて、いつもテクニックルームに行って練習しているものですから、なんだかテクニックルームの主のようになっていまして。
私が少し上手になると、みんなが私と練習したがるので、練習する機会がどんどん増えていきました。
100人以上のクラスだったんですが、その中でもやっぱりテクニックでは目立つ存在になっていたということですね。
櫻井:
在学中には憧れの先生はいましたか。
岡井:
何人かいらっしゃいましたね、やっぱり。
当時LACC と呼ばれる大学(現在の南カリフォルニア健康科学大学)にいたのですが、そこで、フランス人のドクター・フォークレイというAKもやるけれども、マニュアルアジャストメントにも非常に情熱的な先生がいて、その先生の技術と理論が非常に興味深かったです。
自分のテクニックの授業以外でも彼のテクニックの授業には勝手に参加していました。その先生も、また来たかという感じで黙認してくれていましたね。
自分の授業がなかったり、それほど重要でない授業のときなどはサボって、そこでいろいろ勉強しました。
ガンステッドやSOTなど、有名な先生のセミナーに出たり、他の学生たちと一緒に先生のご自宅に押しかけたりして、幅広く興味を持って貪欲に学んでいくっていう面はありましたね。
でも、いろんな先生のやっていることをそのままコピーするというタイプではなく、学んだことをもとにしていろんな工夫をするのが好きでした。
だから生意気にも、実技や理論を見たり聞いたりしたら、自分だったらこうするかなと考える習慣はいつもありましたね。
櫻井:
今でもテクニック・セミナーに出て学ぶこともあるのですか。
岡井:
そうですね。いやもう30年近く勉強してきて、やっぱり本当に珍しいこととか、感動する先生に会うっていうのはなくなってきていますけど。
逆に言うと、どんな人からも学ぶところがあって、例えば学生を見ていてもそこから感じることとか、学生が犯す間違いから学ぶことがあったり。
誰からでも学ぶことができるなというのを最近感じていますね。
櫻井:
そうですか。そうするともう今はこの人が理想みたいな時期は超えているってことですね。
岡井:
そうでないといけないですよね。これだけキャリアを積んできたら。
みんなの目標となれるような人にならなきゃいけないという気持ちでいますね。
患者さんの要望に応え、カイロプラクターの特色を生かしていく
櫻井:
先生の臨床に興味持っている方も多いと思うので、お聞かせいただければと思うのですが。アジャスト中心とした治療スタイルと言うことはできますか。
岡井:
うーん、ケースバイケースかなぁ。はい。
例えば、筋肉が一番の問題だとすれば、筋肉に重きを置くことだってあるわけです。
そのケースを的確に診察して最も有効な治療をするというのが大事なので、カイロプラクターとしてなるべく特性を生かして治療することはもちろん重要ですけど、それがエゴになって、1人よがりの治療になってはいけないということですね。
アジャストをどんな人にも無差別に行うとかね。
必ずアジャストするという考えは非常に危険でもあると思うし。
それは正しいカイロプラクティックのアジャストメントの用い方でもないと思います。
だからケースバイケースで判断するということです。
できるだけそこにカイロプラクターとしての特色を生かしていきたいとは思っています。
櫻井:
患者さんの治療に対する要望は大切にしますか。
岡井:
そうですね、要望はなるべく取り入れるんですが、その結果失敗することもありますね。
患者さんの要望を優先して自分がやるべきことを見失ってしまうこともあるんで。
そういうのはもう試行錯誤というか未だに勉強です。
基本的なこととしては、患者さんがしてほしくない治療というのはしません。
例えば頸椎のをアジャストしてほしくないと患者さんが言えば、それは患者さんのコンセントがないということですのでしません。
櫻井:
そうなんですか。アメリカにもそういう方がいるんですか。
岡井:
もちろんいます。
頸椎のアジャストが怖いっていうのは十分理解できますので、してほしくないという場合はしないですね。
そのかわりモービリゼーションやストレッチを使って頸椎を動かしていく。
アジャストすれば早いのにと思うけど、それを受け入れられない患者さんにはセカンドベストの方法ということですね。
櫻井:
メンテナンスとかウェルネス的な治療についてはどうでしょうか。
岡井:
患者さんが何を欲しているのかというのもありますし、お金がかかるものでもあり、当然その患者さんに最終的に判断してもらいます。
しかし、こちらのレコメンデーションはちゃんと説明して、どれぐらいのペースでメンテナンス・ケアをした方がいいですよということはお勧めします。
櫻井:
ウェルネス・ケアに関してはアメリカの方はどのぐらい関心があるんですか。
岡井:
もういろんな人いますよ。
最初から痛いところはないけれど、カイロに興味があり、より健康になりたいから来る方もいれば、痛いところがなくなったらもう来ないという人もたくさんいます。
ウェルネスの意義の説明はしますけど、最終的にはその方のチョイスです。
櫻井:
時間とか先生とスタッフとの兼ね合いなど、治療の流れみたいなところを教えてもらえますか。
岡井:
治療の典型的な流れを言えば、患者さんが最初に来たら、話をして、まずセラピーから入っていくことが多いですね。
低周波やホットパックを使って筋肉の治療を10分ほどして、その後私が筋肉を手で治療します。
ただ筋肉を緩めるというより、その患者さんの問題に注目して治療していきます。
それで十分な準備の後にアジャストするということが多いですね。
アジャスト後にさらにストレッチをすることもあります。
急性で炎症が強い場合は必ず最後にアイスをしますし。
私の場合は筋肉も骨格も同じように重要だと考えています。
二つはリンクして働くものですから、両方治療した方がよいに決まっているということですね。
そういうことで患者さんの要望も聞きますが、ほとんどの患者さんで筋肉と骨格と両方を見て、ケースマネジメントをしていきます。
櫻井:
先生は弟子をとっていますか。
岡井:
アソシエイトのことですね。アソシエイトは2年ぐらい前を最後にもう取らないことにしました。
それまで20年ぐらいの間、誰かしらいましたけどね。
と言うのは、私のそばにいると伸びない。この環境に甘える。
彼らは収入を得て私に稼がせてくれなきゃいけないんですが、実際問題、給料以上に稼ぐアソシエイトはいなかったですね。
私がアソシエイトしていたときの状態を超えたり、私を満足させたアソシエイトは1人もいない。ということは、私の育て方が下手なんだと思います。
人間っていうのは自分がスタンダードなんですよ。自分ができることは、みんなもできるだろうと思っちゃうわけです。自分がこれぐらい頑張ったら、他の人も頑張るものだろうと思う。
でも、そうじゃないですよね。そこら辺を理解して指導できないと、身近に人を置くのは向かないんですよ。
だから、これからは本とかセミナーとか、そういう面でより多くの方に伝えていく方がいいかなと思って。
業界で私以上にアソシエイトをたくさんとってきた人もいないと思うし。
そういった面では十分貢献はしたと思うので、これからはセミナーや本を通じて多くの人のお手伝いをできたらいいかなと思います。
エネルギー療法のとらえ方。エネルギーは誰もが持っているもの
櫻井:
意思の力とか、信じること、またはエネルギー療法につながるエネルギーと、手技治療の関係はどのようにとらえていますか。
岡井:
エネルギーの交換っていうのは人がいれば必ず起こるわけですよ。
例えば、会うと自然と元気になるという人もいれば、人にエネルギーを吸い取られるようなこともありますよね。
だからといって、それを治療に用いるのは私はあまり興味がないんです。
ただしその存在は絶対にあると思います。
それを自由に操って治療に用いることができるほどの人は、ほとんどいないと思います。
逆に言えば、誰でもエネルギーがあるわけだから、例えば誰かが誰かの肩の上に手を置けば、そこにエネルギーの効果があるわけですよ。
小さな子どもが親の肩をもめば、そこに自分で自分の肩を揉むのとは全く違う種類のエネルギーがあるわけですよね。
そういった力とかエネルギーは、非常に重要なものだとは思いますけど、それを自分がコントロールして治療に積極的に用いるかというとそうではない。
ただし、そういうものを否定する気もないし、実際私が行っている治療の中で、自然とそういうものは発生しているっていうということは確実にあると思いますね。
櫻井:
なるほど。先生の治療スタンスを垣間見る気がします。
先生は、よい心根でいることを大切にしているように見えるのですが、それも治療に影響すると考えていますか。
岡井:
実際ね、我々は人の身体に触れて治療するわけですよ。
人間なんて誰でも邪悪な心もあれば、よい心も持っているんですよ。
そんなのは当たり前のことですが、人の身体に触れるときに邪悪な部分が多過ぎれば、それが結果として出てくるわけです。悪い結果として出てくる。
どれだけその患者さんを思いやるか、幸せにしてあげたい気持ちがあるかどうかっていうのはもう自然と相手にも伝わるし、結果として出てくると思うんですね。
私だって結果が出ないことはあるけど、私が一生懸命その人に向き合っているかどうかですよね、重要なのは。
そうすると、その患者さんがやっぱり私のことを信頼して根気強く治療に通ってくれる。
それで、わずかずつ結果が積み重なって、最後はよい結果で終わるということもあります。
人間同士のことですから、やっぱりその人の心根っていうのが必ず伝わります。
患者さんは立派な方が多いし、ちゃんと人を見る目を持っていますのでね。
たまたま私達は「先生」なんて呼ばれていますけど、人格的には私よりよっぽど立派な患者さんがたくさんいらっしゃいますのでね。
彼らは、私達の心なんていうのはもうお見通しですよ。
自分が上手く立ち回っているつもりでも、もう周りに見えているということです。
だから本当に気持ちを整えて、よい心根で向かい合いたいなとは思っています。
私もそれほど立派な人じゃないんで、まだまだだと思ってますけど。
櫻井:
心の内に隠そうとすることは、意外と見えてしまう…。
これはどんなときでもしっかり覚えておかないといけないですね!
お話を伺っていて、岡井先生が、患者さんも先生もお互いが尊重できる関係を大切にされているんだなと感じました。
これからもお元気で、カイロプラクティックで人々の健康をサポートしていってください!